【弁護士監修】飲み会でのセクハラ発言、会社は責任を負うの?
飲み会での発言もハラスメントに当たる可能性があります!
飲み会での発言もハラスメントに
当たる可能性があります!
会社の飲み会で羽目を外して失言をしてしまった経験がある方も多いのではないかと思います。しかし、有志のみが参加する飲み会であっても、「職場」でのハラスメントに該当する可能性があるので注意が必要です。
飲み会の場も「職場」に含まれるの?
ハラスメントに関する訴えが社内でなされた場合には、企業は事実関係を調査する義務を負います。それでは、訴えのあったハラスメントが会社の飲み会で発生した場合には、会社は事実関係を調査する必要があるのでしょうか?
法律上規制されているパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントは、「職場」において行われることが要件となっているため、飲み会の場が「職場」と評価されるか否かによって、その判断が分かれることとなります。
勤務時間外、職場外で行われる有志の従業員が参加する飲み会での発言は、「職場」において行われたものとは言えないようにも思えます。
しかし、飲み会の開催目的が、その発案者や企画者、開催日時、勧誘対象、勧誘方法に照らして、従業員相互の親睦を図ることにある場合には、飲み会も「職場」と評価される可能性が高いものと考えられます。 実際に裁判となった事案を参考に確認してみましょう。
旭川地裁令和4年2月8日判決(LLI/DB判例秘書登載)
事案の概要
国土交通省北海道開発局に所属する事務所の所長が発案者となって、定時退庁日訓練の打ち上げの趣旨で懇親会が企画され、以下のメールが、事務所のほぼ全職員である約40名の職員に対し、職員用のメールアドレスを用いて案内され、業務委託先の職員等にも案内されました。
□□□事務所 各位
おつかれさまです。
来る30日(金)は定時退庁訓練が開催されますが、せっかくなので打ち上げも開催したいと思います。
時間:18時半~
場所・会費:未定(決まり次第ご連絡いたします)
金曜日でボーナス支給日、さらに次の月曜日には健康診断ということで、家族持ちの方や健康に気を使われている方には悪条件が重なってしまっておりますが、もしご都合が合えば出席をお願いいたします!!
上記のメールと、その後の詳細連絡の結果、事務所の男性職員5名、女性職員4名に加え、委託業者の男性職員4名の計13名が出席して懇親会が実施され、その後場所を変えて二次会も開催されました。かかる懇親会及び二次会において、男性職員から女性職員に対してセクシュアルハラスメントに該当する発言がなされたとの訴えが提起されました。
裁判所の判断
国賠法1条1項の『職務を行うについて』とは、公務員による職務の執行行為そのものだけではなく、これと密接な関連を有する行為も含まれるものと解されるところ、本件については、前記認定事実(1)イのとおり、本件懇親会は、所長の発案により、その意向を受けたHが幹事となり企画されたものであり、定時退庁訓練の実施日に、□□□事務所のほぼ全職員に対し、職員用のメールアドレスを用いて案内され、業務上関係するBや業務委託先の職員にも案内されたこと、Hが送信したメールの文面は、私的な親睦会の有志を募るものではなく、職員に広く参加を呼びかける内容であったことなどに照らすと、少なくとも本件懇親会については、一部の職員による私的な飲み会ではなく、□□□事務所の業務を行う職員相互の親睦を図る目的で開催されたものと言えるから、本件懇親会及びその中で行われた本件セクハラ発言は、職務の執行に密接に関連を有する行為として、『職務を行うについて』されたと認めるのが相当である。」
旭川地裁令和4年2月8日判決(LLI/DB判例秘書登載)
検討
上記裁判例では、少なくとも懇親会について、
①所長の発案により、その意向を受けた職員が幹事となり企画されたこと
②定時退庁訓練の実施日に開催されたこと
③事務所のほぼ全職員に対し、職員用のメールアドレスを用いて案内され、業務委託先の職員等にも案内されたこと
④メールの文面は、私的な親睦会の有志を募るものではなく、職員に広く参加を呼びかける内容であったこと
を考慮して、「職員相互の親睦を図る目的」で開催されたものであり、懇親会におけるハラスメント発言が「職務を行うについて」行われたものであると認定されています。
上記裁判例は、行政庁におけるハラスメントが問題とされている関係で、国家賠償法上の要件である「職務を行うについて」に該当するか否かという観点からの判断を示したものですが、事実関係調査の前提となる「職場」の該当性の判断が問題になる場合にも、同様の要素の検討が必要と考えられます。
まとめ
会社の従業員同士の飲み会の場も、私的な親睦会ではなく、従業員相互の親睦を図ることにある場合には、「職場」と判断され、ハラスメント調査の対象となる可能性があります。 お酒の席だからといって、羽目を外しすぎないようにご注意ください!
執筆者:株式会社リーガルライト 祐川 葉
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弁護士 祐川 友磨
慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
2015年の弁護士登録後、都内の弁護士事務所に勤務し、2021年に祐川法律事務所を開所。
企業法務・労務を中心に各種事案に幅広く対応。
弁護士 祐川 友磨
慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
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