【弁護士監修】ハラスメント発生時のヒアリング、「報告書」では不十分?

ハラスメント発生時のヒアリング、「報告書」では不十分?

 社内でパワハラが発生しました。
 私(D)が、相談者Aさん、行為者Bさん、目撃者Cさんのヒアリングを担当します。

 ヒアリングの結果は、「あかるい職場応援団」のホームページに「行為者聞き取り票」のテンプレートが載っていたので、これを利用して報告書を作成しようと考えていました。 
 ところがインターネットで報告書について調べていたところ、弁護士事務所のホームページなどに「ヒアリングした内容は陳述書を作成した方がいい」と書いてあるのをいくつか見つけました。
 ヒアリング結果は「報告書」の作成では不十分でしょうか?
 そもそも「陳述書」とはどういったもので、「報告書」と「陳述書」はどう違うのでしょうか?
  「報告書」と「陳述書」のどちらを作成すればいいのか教えてください。

 ※ 参照 厚生労働省「あかるい職場応援団」/「ハラスメント関係資料ダウンロード

 ヒアリングした結果をどのような形で会社に報告をするのかお悩みですね。
 まず、ヒアリング結果の報告は、大きく分けて、報告書形式と陳述書形式の2種類があります。

報告書とは?

 報告書とは、ヒアリングを実施した担当者の名義で作成する文書のことです。
 記載するのは、担当者がヒアリング対象者から聞いた内容をまとめたもので、会社あてに作成します。

 今回の事案であれば、Dさんが、Aさんからヒアリングした内容、Bさんからヒアリングした内容、Cさんからヒアリングした内容をそれぞれまとめて、Dさんの名義で会社あてに文書を作成します。

陳述書とは?

 陳述書とは、ヒアリング対象者が自身の名義で作成した文書で、通常、作成者本人がこれに署名や押印を行います。
 記載するのは、ヒアリング対象者自身が見聞きしたり考えていることを”陳述する=述べる”内容で、これを会社あてに書面化して作成します。
 今回の事案であれば、Aさん、Bさん、Cさんが、Aさんの陳述書はAさん名義、Bさんの陳述書はBさん名義、Cさんの陳述書はCさん名義で、会社あてに、それぞれ陳述したい内容を記載した文書を作成します。

 ただ、ご自身で陳述書を作成された場合、一方的な主張にとどまってしまったり、伝えたいことが説明しきれていなかったり、他の関係者の話をふまえた内容の記載がなかったりと、事実関係を把握するのに必要な情報が不足しているケースが多く見られます。
 そのため、ハラスメント調査などの場合には、ヒアリングを実施した担当者が、まずはヒアリング対象者の代わりに陳述書案を作成します。
 そして、ヒアリング対象者は、陳述書案の内容を確認して適宜訂正を行い、内容に間違いがないことを確認した時点で、ヒアリング対象者が陳述書を作成したものとして取り扱う流れになります。

 このような「陳述書」の作成手順は、刑事事件で「供述調書」を作成する場面でも同様に行われています。
 検察官等の取調べ担当者は、被疑者や被害者から聴取をおこなった後、被疑者や被害者自身が”供述する=述べる”形式で「供述調書」案を作成します。
 被疑者や被害者は、この「供述調書」案に記載されている内容をよく確認し、記載内容に誤りがあれば適宜申立てて訂正し、内容に間違いがないことを確認した上で署名等を行い、「供述調書」は完成します。
 こうしてできあがった「供述調書」は、刑事訴訟法上、取調べ担当者が自身の名義で作成した報告書よりも信用性が高いものとして定められており、公判廷においても重要な証拠として取り扱われることになります。

「報告書」と「陳述書」のメリットとデメリット

報告書の場合

 報告書を作成した場合、陳述書を作成した場合に比べて担当者の労力が少ないため、迅速に調査を進められるメリットがあります。
 また、報告書の提出を受けた企業側にとって、日頃から読み慣れた報告書形式で記載されることにより、内容の意図を容易に解釈できるでしょう。

 デメリットは、ハラスメント発生時のヒアリングなど、微妙なニュアンスや言い回しで意味が大きく異なる場面においては、ヒアリング対象者が説明した内容をまとめ、かつ、その意図や主張どおりに正確に記載することが非常に難しい点です。
 そのため、報告書の記載内容が、ヒアリング対象者の説明と異なってしまったり、不十分な内容になってしまうリスクがあります。
 また、多くの場合、ヒアリング対象者に対して、作成した報告書の記載内容を確認して訂正や補足をするなどの作業をおこなっていないため、報告書の記載内容がヒアリング対象者の主張等と異なるリスクはさらに高まります。

 企業は、調査結果に基づいて懲戒等の最終処分を行いますので、報告書の内容がヒアリング対象者の説明等と異なっていたり不十分であるなどして正確な記載がなされていない場合には、歪んだ事実に基づいて判断を下すことになります。
 その結果、企業や、ヒアリングや報告書を作成した担当者は、正確な事実調査を怠った責任を問われるリスクを負います。

 特にハラスメント調査の場合には、実際のヒアリングにおいてセンシティブな話題にふれる場面が多く、ヒアリング対象者から「この話は会社側に言わないでほしかった」という話が後になってなされる場合が少なからずあり、担当者が、そのような内容を報告書に記載して企業に伝えてしまうことでトラブルになったり、責任を問われるリスクもあります。

陳述書の場合

 陳述書を作成した場合、ヒアリング対象者が記載内容に間違いがないことを確認してから署名を行うため、説明した内容と異なる意味合いで企業への報告がなされてしまうリスクが少なく、内容を正確に企業に伝えることができるメリットがあります。

 企業側にとっては、担当者が歪んだ事実や不十分な内容を報告書に記載してしまうことで起こり得る、正確な事実調査を怠った事業者としての責任や、懲戒判断の誤りによる訴訟等のリスクを避けることができるメリットがあります。
 
 また、ヒアリング対象者と担当者が互いに、陳述書の記載内容や企業側に伝える内容を確認できることで、双方とも安心してヒアリングに集中できるメリットもあります。
 
 一方、デメリットとして、担当者側の力量が不足していた場合、誤ったり偏った方向でヒアリングが実施されたり、不十分なヒアリングが行われたという事実が書面として残され、それが証拠として明らかになる点です。
 また、慣れないヒアリングや陳述書の作成は、時間的にも精神的にも担当者の大きな負担となります。
 そして、ヒアリングや陳述書の作成に時間がかかってしまえば、法令が求める迅速な調査が実現できなくなるおそれもあります。

報告書と陳述書、どちらを作成するのか

 ヒアリング結果をどちらで報告するかについては、担当者の精神的・時間的な負担や、慣れない陳述書作成業務によって調査が長引くなどのデメリットを考えると、実際には報告書形式での報告がやむを得ない場合がほとんどかもしれません。
 ただ、記載内容の正確性や発生するリスクなどを比較すると、ヒアリング対象者から聞いた話をとりまとめた報告書と、ヒアリング対象者本人が直接記載した陳述書では、陳述書を作成した方に大きなメリットがあります。

 弊社では、「陳述書」でのヒアリング結果が必要な企業・団体を対象として、「ヒアリングによる事実調査」サービスをご提供しております。
 同サービスは、捜査機関と同水準のヒアリングを実施し、短期間で、正確性の高い陳述書の作成が可能です。
 ハラスメントなどのコンプライアンス違反事案のヒアリングにお困りの際は、是非当社にご相談ください。

執筆者:株式会社リーガルライト 祐川 葉  

ハラスメント発生時のヒアリング
「報告書」では不十分?

 社内でパワハラが発生しました。
 私(D)が、相談者Aさん、行為者Bさん、目撃者Cさんのヒアリングを担当します。

 ヒアリングの結果は、「あかるい職場応援団」のホームページに「行為者聞き取り票」のテンプレートが載っていたので、これを利用して報告書を作成しようと考えていました。
 
 ところがインターネットで報告書について調べていたところ、弁護士事務所のホームページなどに「ヒアリングした内容は陳述書を作成した方がいい」と書いてあるのをいくつか見つけました。

 ヒアリング結果は「報告書」の作成では不十分でしょうか?

 そもそも「陳述書」とはどういったもので、「報告書」と「陳述書」はどう違うのでしょうか?
 
 「報告書」と「陳述書」のどちらを作成すればいいのか教えてください。

 ※ 参照 厚生労働省「あかるい職場応援団」/「ハラスメント関係資料ダウンロード

 ヒアリングした結果をどのような形で会社に報告をするのかお悩みですね。
 まず、ヒアリング結果の報告は、大きく分けて、報告書形式と陳述書形式の2種類があります。

報告書とは?

 報告書とは、ヒアリングを実施した担当者の名義で作成する文書のことです。
 記載するのは、担当者がヒアリング対象者から聞いた内容をまとめたもので、会社あてに作成します。

 今回の事案であれば、Dさんが、Aさんからヒアリングした内容、Bさんからヒアリングした内容、Cさんからヒアリングした内容をそれぞれまとめて、Dさんの名義で会社あてに文書を作成します。

陳述書とは?

 陳述書とは、ヒアリング対象者が自身の名義で作成した文書で、通常、作成者本人がこれに署名や押印を行います。
 記載するのは、ヒアリング対象者自身が見聞きしたり考えていることを”陳述する=述べる”内容で、これを会社あてに書面化して作成します。
 今回の事案であれば、Aさん、Bさん、Cさんが、Aさんの陳述書はAさん名義、Bさんの陳述書はBさん名義、Cさんの陳述書はCさん名義で、会社あてに、それぞれ陳述したい内容を記載した文書を作成します。

 ただ、ご自身で陳述書を作成された場合、一方的な主張にとどまってしまったり、伝えたいことが説明しきれていなかったり、他の関係者の話をふまえた内容の記載がなかったりと、事実関係を把握するのに必要な情報が不足しているケースが多く見られます。
 そのため、ハラスメント調査などの場合には、ヒアリングを実施した担当者が、まずはヒアリング対象者の代わりに陳述書案を作成します。
 そして、ヒアリング対象者は、陳述書案の内容を確認して適宜訂正を行い、内容に間違いがないことを確認した時点で、ヒアリング対象者が陳述書を作成したものとして取り扱う流れになります。

 このような「陳述書」の作成手順は、刑事事件で「供述調書」を作成する場面でも同様に行われています。
 検察官等の取調べ担当者は、被疑者や被害者から聴取をおこなった後、被疑者や被害者自身が”供述する=述べる”形式で「供述調書」案を作成します。
 被疑者や被害者は、この「供述調書」案に記載されている内容をよく確認し、記載内容に誤りがあれば適宜申立てて訂正し、内容に間違いがないことを確認した上で署名等を行い、「供述調書」は完成します。
 こうしてできあがった「供述調書」は、刑事訴訟法上、取調べ担当者が自身の名義で作成した報告書よりも信用性が高いものとして定められており、公判廷においても重要な証拠として取り扱われることになります。

「報告書」と「陳述書」のメリットとデメリット

報告書の場合 

 報告書を作成した場合、陳述書を作成した場合に比べて担当者の労力が少ないため、迅速に調査を進められるメリットがあります。
 また、報告書の提出を受けた企業側にとって、日頃から読み慣れた報告書形式で記載されることにより、内容の意図を容易に解釈できるでしょう。

 デメリットは、ハラスメント発生時のヒアリングなど、微妙なニュアンスや言い回しで意味が大きく異なる場面においては、ヒアリング対象者が説明した内容をまとめ、かつ、その意図や主張どおりに正確に記載することが非常に難しい点です。
 そのため、報告書の記載内容が、ヒアリング対象者の説明と異なってしまったり、不十分な内容になってしまうリスクがあります。
 また、多くの場合、ヒアリング対象者に対して、作成した報告書の記載内容を確認して訂正や補足をするなどの作業をおこなっていないため、報告書の記載内容がヒアリング対象者の主張等と異なるリスクはさらに高まります。

 企業は、調査結果に基づいて懲戒等の最終処分を行いますので、報告書の内容がヒアリング対象者の説明等と異なっていたり不十分であるなどして正確な記載がなされていない場合には、歪んだ事実に基づいて判断を下すことになります。
 その結果、企業や、ヒアリングや報告書を作成した担当者は、正確な事実調査を怠った責任を問われるリスクを負います。

 特にハラスメント調査の場合には、実際のヒアリングにおいてセンシティブな話題にふれる場面が多く、ヒアリング対象者から「この話は会社側に言わないでほしかった」という話が後になってなされる場合が少なからずあり、担当者が、そのような内容を報告書に記載して企業に伝えてしまうことでトラブルになったり、責任を問われるリスクもあります。

陳述書の場合

 陳述書を作成した場合、ヒアリング対象者が記載内容に間違いがないことを確認してから署名を行うため、説明した内容と異なる意味合いで企業への報告がなされてしまうリスクが少なく、内容を正確に企業に伝えることができるメリットがあります。

 企業側にとっては、担当者が歪んだ事実や不十分な内容を報告書に記載してしまうことで起こり得る、正確な事実調査を怠った事業者としての責任や、懲戒判断の誤りによる訴訟等のリスクを避けることができるメリットがあります。
 
 また、ヒアリング対象者と担当者が互いに、陳述書の記載内容や企業側に伝える内容を確認できることで、双方とも安心してヒアリングに集中できるメリットもあります。
 
 一方、デメリットとして、担当者側の力量が不足していた場合、誤ったり偏った方向でヒアリングが実施されたり、不十分なヒアリングが行われたという事実が書面として残され、それが証拠として明らかになる点です。
 また、慣れないヒアリングや陳述書の作成は、時間的にも精神的にも担当者の大きな負担となります。
 そして、ヒアリングや陳述書の作成に時間がかかってしまえば、法令が求める迅速な調査が実現できなくなるおそれもあります。

報告書と陳述書、どちらを作成するのか

 ヒアリング結果をどちらで報告するかについては、担当者の精神的・時間的な負担や、慣れない陳述書作成業務によって調査が長引くなどのデメリットを考えると、実際には報告書形式での報告がやむを得ない場合がほとんどかもしれません。
 ただ、記載内容の正確性や発生するリスクなどを比較すると、ヒアリング対象者から聞いた話をとりまとめた報告書と、ヒアリング対象者本人が直接記載した陳述書では、陳述書を作成した方に大きなメリットがあります。

 弊社では、「陳述書」でのヒアリング結果が必要な企業・団体を対象として、「ヒアリングによる事実調査」サービスをご提供しております。
 同サービスは、捜査機関と同水準のヒアリングを実施し、短期間で、正確性の高い陳述書の作成が可能です。
 ハラスメントなどのコンプライアンス違反事案のヒアリングにお困りの際は、是非当社にご相談ください。

執筆者:株式会社リーガルライト 祐川 葉  

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監修者

弁護士 祐川 友磨

慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
2015年の弁護士登録後、都内の弁護士事務所に勤務し、2021年に祐川法律事務所を開所。
企業法務・労務を中心に各種事案に幅広く対応。

監修者

弁護士 祐川 友磨

慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
2015年の弁護士登録後、都内の弁護士事務所に勤務し、2021年に祐川法律事務所を開所。
企業法務・労務を中心に各種事案に幅広く対応。

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