【弁護士監修】ハラスメントのヒアリングに同席者を求められたら?

「ヒアリングに弁護士を同席させたい」と言われたら・・・?

 当社のハラスメント相談窓口にパワハラの相談がありました。

 人事担当者が相談者にヒアリングをして事情を聞こうとしたところ、相談者から「ヒアリングには弁護士を同席させてもらいたい」と申し出がありました。

 弁護士の同席を断って相談者のヒアリングを実施することに問題はないでしょうか?

 また、もし行為者からも同じ申し出を受けた場合も、同席を断ってヒアリングを実施することはできますか?

 ヒアリングを行う際の手続の詳細は、原則として会社の裁量に委ねられているため、まずは就業規則や懲戒規定等の社内規程を確認し、社内のルールを確認しましょう。

相談者から弁護士の同席を求められた場合

立会いを認める規定がある場合

 社内規程に弁護士の立会いを認める旨の定めがある場合には、原則として立会いを認める必要があります。
 弁護士同席の聴取となると、人事担当者の方は身構えてしまうかもしれませんが、弁護士の立会いは会社と相談者の双方にメリットがあります。

  • 会社側のメリット
    弁護士の立会いによって相談者はヒアリングにおいて正当な権利行使をする機会を与えられたものと推認できることから、公正な聴取手続が行われたことを示す証拠とすることができます。
  • 相談者側のメリット
    一般的に、会社の従業員と人事部のハラスメント担当者では法的知識の量に偏りがあります。そのため、自身の正当な権利を守るために、弁護士を聴取手続に同席させ、アドバイスを受けることは、相談者にとって有益です。

 では、弁護士がヒアリングを妨害する等の有害な行為に及んだ場合には、どのように対処すれば良いでしょうか?

 弁護士の立会いが従業員の権利であったとしても、そのような妨害行為を行うことは権利の濫用に当たります。
 そこで、会社としては、弁護士の行為がヒアリングの障害となっていることを伝えて中止を求めた上で、それでも妨害行為をやめない場合には、①弁護士に退席を求めるか、②妨害行為あったことを記録した上で聴取を打ち切るなどの対応が望まれます。

立会いを認める規程がない場合

 社内規程に立会いを認める旨の定めがない場合(実際上、規程の定めがない会社が大半かと思います。)には、会社側で立会いの可否を任意に決定することになります。

 弁護士の立会いはデメリットばかりではなく、上記のようなメリットもあるため、基本的には立会いを認めた上で、妨害行為には個別に対処をしていくことをお勧めします。

 仮に弁護士の立会いを認めない場合には、被聴取者が真意に基づいて供述できるように、被聴取者への状況説明を丁寧に行い、被聴取者からの質問にも丁寧に回答するなど、被聴取者に十分に配慮して聴取を行う必要があります。

行為者から弁護士の同席を求められた場合

 社内規程に弁護士の立会いを認める旨が定められていなくとも、「懲戒処分を実施する場合には弁明の機会を与える」旨が定められている場合があります。

 そのため、行為者から弁護士の同席を求められた場合には、この「弁明の機会」という観点からの検討も必要になります。

 「懲戒処分を実施する場合には弁明の機会を与える」旨の規定が定められている場合に、行為者からのヒアリングに弁護士を同席させることを拒むと、行為者から適切な「弁明の機会」が与えられなかったとして、懲戒処分の無効を主張される可能性があります。

 結論としては、懲戒処分を行うまでの手続の内容は原則として会社の裁量に委ねられており、社内規程に弁護士の同席を認める旨の定めがなければ、立会いを認めなくとも問題はありません。しかし、弁護士の立会いを認めないことで上記のような不要な紛争の発生を招くのであれば、立会いを認めた上で、弁護士による妨害行為等が発生した場合に個別に対応をしていく方が、結果としてスムーズに対応できるでしょう。

弁護士以外の第三者の立会いを認めるべきケース

 弁護士以外にも、知人や親族、カウンセラーなど、第三者の立会いを求められる場合があります。

 このような場合にも、社内規程に特段の定めがなければ会社の裁量で立会いの可否を判断することになりますが、個別の事案に応じて、立会いの必要性と立会人の相当性を検討した上で判断しましょう。

 例えば、被聴取者が精神的に不安定な状態にあり、単独での聴取が困難なときには、ヒアリングを適切に行うために第三者の立会いの必要性があるといえるでしょう。
 次に立会人としての相当性ですが、事案の直接の関係者等、被聴取者の発言内容に利害関係を有する者の立会いを認めることは相当性に欠けますが、被聴取者に近しい親族や友人、専門家であるカウンセラーなど、被聴取者の任意の供述を助ける人物であれば相当性があるといえるでしょう。

まとめ

 以上のとおり、ヒアリングに立会人を認めるか否かは、原則として会社の裁量に委ねられており、社内規程の内容によって対応が変化します。

 なお、立会人が被聴取者の意思の決定や発言に大きな影響力を持ち、被聴取者の意思や事実関係が歪められることにより、公正なヒアリングが実施できないおそれがある場合には、立会いを認めない判断が望ましい場合もあり、適切な状況把握と慎重な判断が必要となります。

 ハラスメント発生時のヒアリングは日常的な業務ではないため、実施の際には色々とお悩みが生じるかと思います。第三者の立会いの可否に限らず、ヒアリングに関するお悩みは是非当社にご相談ください。

執筆者:株式会社リーガルライト 祐川 葉  

「ヒアリングに弁護士を同席させたい」と言われたら・・・?

 当社のハラスメント相談窓口にパワハラの相談がありました。

 人事担当者が相談者にヒアリングをして事情を聞こうとしたところ、相談者から「ヒアリングには弁護士を同席させてもらいたい」と申し出がありました。
 弁護士の同席を断って相談者のヒアリングを実施することに問題はないでしょうか?

 また、もし行為者からも同じ申し出を受けた場合も、同席を断ってヒアリングを実施することはできますか?

 ヒアリングを行う際の手続の詳細は、原則として会社の裁量に委ねられているため、まずは就業規則や懲戒規定等の社内規程を確認し、社内のルールを確認しましょう。

相談者から弁護士の同席を求められた場合

立会いを認める規定がある場合

 社内規程に弁護士の立会いを認める旨の定めがある場合には、原則として立会いを認める必要があります。
 弁護士同席の聴取となると、人事担当者の方は身構えてしまうかもしれませんが、弁護士の立会いは会社と相談者の双方にメリットがあります。

  • 会社側のメリット
    弁護士の立会いによって、相談者はヒアリングにおいて正当な権利行使をする機会を与えられたものと推認されることから、公正な聴取手続が行われたことを示す証拠とすることができます。
  • 相談者側のメリット
    一般的に、会社の従業員と人事部のハラスメント担当者では法的知識の量に偏りがあります。そのため、自身の正当な権利を守るために、弁護士を聴取手続に同席させ、アドバイスを受けることは、相談者にとって有益です。

 では、弁護士がヒアリングを妨害する等の有害な行為に及んだ場合には、どのように対処すれば良いでしょうか?

 弁護士の立会いが従業員の権利であったとしても、そのような妨害行為を行うことは権利の濫用に当たります。
 そこで、会社としては、弁護士の行為がヒアリングの障害となっていることを伝えて中止を求めた上で、それでも妨害行為をやめない場合には、①弁護士に退席を求めるか、②妨害行為あったことを記録した上で聴取を打ち切るなどの対応が望まれます。

立会いを認める規程がない場合

 社内規程に立会いを認める旨の定めがない場合(実際上、規程の定めがない会社が大半かと思います。)には、会社側で立会いの可否を任意に決定することになります。

 弁護士の立会いはデメリットばかりではなく、上記のようなメリットもあるため、基本的には立会いを認めた上で、妨害行為には個別に対処をしていくことをお勧めします。

 仮に弁護士の立会いを認めない場合には、被聴取者が真意に基づいて供述できるように、被聴取者への状況説明を丁寧に行い、被聴取者からの質問にも丁寧に回答するなど、被聴取者に十分に配慮して聴取を行う必要があります。

行為者から弁護士の同席を求められた場合

 社内規程に弁護士の立会いを認める旨が定められていなくとも、「懲戒処分を実施する場合には弁明の機会を与える」旨が定められている場合があります。

 そのため、行為者から弁護士の同席を求められた場合には、この「弁明の機会」という観点からの検討も必要になります。

 「懲戒処分を実施する場合には弁明の機会を与える」旨の規定が定められている場合に、行為者からのヒアリングに弁護士を同席させることを拒むと、行為者から適切な「弁明の機会」が与えられなかったとして、懲戒処分の無効を主張される可能性があります。

 結論としては、懲戒処分を行うまでの手続の内容は原則として会社の裁量に委ねられており、社内規程に弁護士の同席を認める旨の定めがなければ、立会いを認めなくとも問題はありません。しかし、弁護士の立会いを認めないことで上記のような不要な紛争の発生を招くのであれば、立会いを認めた上で、弁護士による妨害行為等が発生した場合に個別に対応をしていく方が、結果としてスムーズに対応できるでしょう。

弁護士以外の第三者の立会いを認めるべきケース

 弁護士以外にも、知人や親族、カウンセラーなど、第三者の立会いを求められる場合があります。

 このような場合にも、社内規程に特段の定めがなければ会社の裁量で立会いの可否を判断することになりますが、個別の事案に応じて、立会いの必要性と立会人の相当性を検討した上で判断しましょう。

 例えば、被聴取者が精神的に不安定な状態にあり、単独での聴取が困難なときには、ヒアリングを適切に行うために第三者の立会いの必要性があるといえるでしょう。
 次に立会人としての相当性ですが、事案の直接の関係者等、被聴取者の発言内容に利害関係を有する者の立会いを認めることは相当性に欠けますが、被聴取者に近しい親族や友人、専門家であるカウンセラーなど、被聴取者の任意の供述を助ける人物であれば相当性があるといえるでしょう。

まとめ

 以上のとおり、ヒアリングに立会人を認めるか否かは、原則として会社の裁量に委ねられており、社内規程の内容によって対応が変化します。

 なお、立会人が被聴取者の意思の決定や発言に大きな影響力を持ち、被聴取者の意思や事実関係が歪められることにより、公正なヒアリングが実施できないおそれがある場合には、立会いを認めない判断が望ましい場合もあり、適切な状況把握と慎重な判断が必要となります。

 ハラスメント発生時のヒアリングは日常的な業務ではないため、実施の際には色々とお悩みが生じるかと思います。第三者の立会いの可否に限らず、ヒアリングに関するお悩みは是非当社にご相談ください。

執筆者:株式会社リーガルライト 祐川 葉  

ハラスメント対応なら
法人様向けヒアリングによる事実調査専門の株式会社リーガルライトへ

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監修者

弁護士 祐川 友磨

慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
2015年の弁護士登録後、都内の弁護士事務所に勤務し、2021年に祐川法律事務所を開所。
企業法務・労務を中心に各種事案に幅広く対応。

監修者

弁護士 祐川 友磨

慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
2015年の弁護士登録後、都内の弁護士事務所に勤務し、2021年に祐川法律事務所を開所。
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