ハラスメント調査の進め方|ヒアリングの順番と注意点を解説【弁護士監修】

公正性と迅速性を両立させるハラスメント調査とは

公平性と迅速性を両立させる

ハラスメント調査とは

 ハラスメント調査の目的は、事実関係を適切に把握し、組織として公正な判断を行うことにあります。

 ハラスメント調査では、ヒアリングの順番が結果の妥当性と調査期間を大きく左右します。順番を誤ればヒアリングのやり直しが発生し、調査は長期化します。さらに、情報管理を誤れば二次的な紛争に発展する可能性もあります。

 本記事では、実務経験に基づき、企業が行うハラスメント調査の進め方、ヒアリングの順番、注意点について体系的に解説します。

※ハラスメント調査の進め方や調査についてお悩みの場合は、事案に応じた対応方法をご案内しています。ご相談は下記より可能です。

目次

ハラスメント調査の基本的な流れ

 ハラスメント調査の多くは、被害を申し出た相談者の訴えを出発点として進めます。

 厚生労働省で、行為者へのヒアリングを行う場合、必ず相談者の了解を取るとしています(厚生労働省:あかるい職場応援団HP、Q13」)。そのため、調査実施にあたっては、まず相談者に「ハラスメント相談」と「ハラスメント調査」の違いや保護措置として取り得る措置等の手続の流れを丁寧に説明した上、相談者の意向を確認することが重要です。

 ハラスメント調査の基本的な流れは次のとおりです。

ハラスメント調査の基本的な流れ

  1. 相談者の意向確認
  2. 相談者ヒアリング
  3. 目撃者・関係者ヒアリング
  4. 行為者ヒアリング(最終段階)
  5. 必要に応じて追加ヒアリング

調査の土台を築く最重要工程 

 相談者ヒアリングは、ハラスメント調査の中で最も重要な工程です。

 相談者は強い不安や葛藤を抱えていることが多く、特に被害が長期間に及ぶ場合には、相談者自身も出来事が十分に整理されていないこともあります。

 そのため、相談者ヒアリングでは、ヒアリング担当者は、単なる聞き取りではなく、ヒアリング内容の構造化という作業が求められます。 ここが不十分なまま関係者ヒアリングに進むと、追加申立てによりヒアリングをやり直す事態となり、調査の長期化につながります。

「モラハラ」「ロジハラ」といった表現への対応 

 相談者から「モラハラを受けた」「ロジハラだと感じている」といった言葉が用いられることがあります。

 「モラハラ」や「ロジハラ」など法的定義が明確ではないため、評価そのものではなく、

  • どのような言動があったのか
  • どのような状況だったのか
  • 周囲の反応はどうだったか

といった具体的事実に落とし込んで確認することが重要です。

情報開示範囲の確認と記録化 

 相談者によっては、企業側には伝えたいけれど、

  • 行為者に伝えてほしくない内容
  • 特定の人には開示してほしくない事情

が含まれる場合があります。

 相談者ヒアリングでは、ヒアリング内容を記載した陳述書に署名をもらうなどして、誰に、どこまで伝えてよいのかを確認します。

 ヒアリングの録音を行う場合、社内規程への明記や事前告知を徹底することで、後日のトラブルを防止できます。

関係者ヒアリングの順番と進め方

原則として行為者より先に実施

 目撃者や事情を知る上司・同僚がいる場合、行為者本人のヒアリングに先立ち、関係者ヒアリングを実施します。

 弊社が企業から依頼を受けて実施しているハラスメント調査においても、原則として次の順序で進めています。

関係者・行為者ヒアリングの順序

  1. 目撃者
  2. 上司・同僚
  3. 行為者

 客観的事実を整理した上で行為者ヒアリングを行うことで、調査の精度と公平性が高まります。

必要最小限の情報開示

 関係者ヒアリングでは、調査に必要な範囲に限定して情報を開示します。

 相談内容の詳細を過度に伝えないことは、相談者だけでなく行為者の権利保護にもつながります。

 また、ヒアリングを受けた事実や内容を口外しないよう明確に伝え、「うわさ」による二次被害の発生を防止します。この点は、相談者・行為者にも説明することが重要です。

守秘義務と情報管理

 関係者から、

  • 「協力したことを行為者に伝えないでほしい」
  • 「氏名は出さないでほしい」

との要望が出る場合もあります。 相談者ヒアリング同様、情報公開範囲を整理し、記録化することが調査後の信頼確保につながります。

行為者ヒアリングの注意点と公平性の確保

最終段階で実施する理由

 事前に事実関係を整理した上で行為者ヒアリングを実施することで、ヒアリングのやり直しを最小限に抑えることができます。 必要に応じて追加ヒアリングを行い、供述の整合性を確認します。

ハラスメントの疑いのある内容を明確に伝える

 行為者ヒアリングでは、

  • どの行為が
  • どのような理由で問題とされているのか

を具体的に示します。

 曖昧なまま弁明を求めることは、調査の公正性を欠くおそれがあります。

 公平にハラスメント調査を実施するためには、相談者保護と同時に行為者の権利にも配慮する必要があります。手続を公正とすることが、調査後の紛争予防と再発防止につながります。

各供述の照合と追加ヒアリングの実施

 行為者ヒアリング終了後、各供述内容を整理した上で、相談者や目撃者等の説明と食い違う部分や、新たに判明した事実関係がある場合には、必要に応じて追加ヒアリングを実施します。

 追加ヒアリングは、供述の矛盾点を解消し、事実認定の精度を高めるための重要な工程です。一方で、過度なヒアリングの繰り返しは関係者の負担を増やし、調査の長期化にもつながるため、争点を整理した上で、必要最小限の範囲で実施することが重要です。

 また、追加ヒアリングを行う際も、情報開示の範囲や守秘義務への配慮を徹底し、関係者の信頼を損なわないよう適切に進める必要があります。

ハラスメント調査の期間を左右するヒアリング設計

 事案の内容や関係者の人数によって調査期間は異なりますが、ヒアリング順序を定めるなど調査設計が適切であれば期間を短縮しての調査が可能です。

 ヒアリングのやり直しは、企業負担の増大と組織内の緊張の長期化につながります。

 調査設計を誤ると、労働紛争やレピュテーションリスクに発展する可能性もあります。適切な順番で事実を積み上げる調査設計が、迅速性と公平性の両立を実現します。

 事案に応じた調査設計については、個別の状況を踏まえた検討が重要です。

 当社では、元検察事務官としての実務経験を踏まえ、ヒアリング内容の矛盾点や客観資料との整合性を検証しながら調査を進めることにより、ハラスメント調査の公正性と迅速性の両立を図っていますので、ハラスメント調査をご検討中の企業様はご相談ください。

 よくある質問(FAQ)

ハラスメント調査はどのくらいの期間がかかりますか?

事案の内容、関係者の人数、証拠資料の有無によって異なります。

適切な順番でヒアリングを実施すれば比較的短期間で完了することが可能ですが、やり直しが発生すると長期化します。初動の調査設計が重要です。

行為者にすぐ事情を聞いてはいけませんか?

事実整理前に行為者ヒアリングを行うと、追加申立てへの再対応や情報管理上のリスク、関係者ヒアリングに影響が生じる可能性があります。弊社では原則として相談者・関係者ヒアリングを先行させることが望ましいと考えています。

社内調査と外部に依頼するのは何が違いますか?

社内調査では中立性・証拠評価・情報管理に課題が生じる可能性があります。
外部機関が関与することで、客観性の確保、供述の整合性検証、証拠評価を含む事実認定、調査報告書作成まで、公平かつ一貫した対応が可能になります。

行為者の権利はどのように守られますか?

疑いの内容を具体的に示し、十分な弁明機会を確保します。相談者保護と同時に行為者の説明機会を確保することが、公平な調査の前提となります。

匿名での相談でも調査は可能ですか?

匿名でも事実確認は可能ですが、行為者への具体的な指摘や弁明の機会の確保が難しくなる場合があります。事案に応じて適切な方法をご提案します。

執筆者:株式会社リーガルライト 祐川 葉  

ハラスメント対応なら
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監修者

弁護士 祐川 友磨

慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
2015年の弁護士登録後、都内の弁護士事務所に勤務し、2021年に祐川法律事務所を開所。
企業法務・労務を中心に各種事案に幅広く対応。

監修者

弁護士 祐川 友磨

慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
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