部下への厳しい指導はパワハラ?判断基準・裁判例・人事が取るべき対応を実務解説【弁護士監修】
-1.jpg)
部下への指導を厳しくしすぎた経験はありませんか。
「業務指導のつもりだった」
しかし後日、「それはパワハラではないか」と指摘されるケースは少なくありません。
特に人事担当者にとっては、
- どこまでが業務指導なのか
- どこからがパワハラなのか
- 懲戒処分は可能なのか
- ハラスメント調査はどう進めるべきか
といった判断は非常に難しい問題です。
誤った判断は、懲戒処分の無効・争訟リスクにつながる可能性があります。
本記事では、裁判例をもとに、パワハラの判断基準と企業が取るべき対応を解説します。
パワハラの判断基準とは?
パワハラの定義
法令は、職場におけるパワハラを次の4要素をすべて満たす言動と定義しています。
- 職場で行われる
- 優越的関係を背景とする
- 業務上必要かつ相当な範囲を超える
- 就業環境を害する
ここで重要なのは、3です。
つまり、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、職場におけるパワハラにはなりません。
しかし、この「業務上必要かつ相当」かどうかの判断が極めて難しいのです。
-1-300x158.jpg)
パワハラに該当する代表的な言動
厚労省は、パワハラに該当する代表的な言動の類型と、それぞれの類型に該当する例、該当しないと考えられる例として、表を作成して説明しています(厚労省「あかるい職場応援団」HP:パンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました! ~セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに対策をお願いします~」 4頁)。
しかし、上記の表があっても、指導がパワハラに該当するかどうか実務で判断することは簡単ではありません。
弁護士や裁判官といった法律家にとっても、その判断は難しく、裁判例の中にも一審と控訴審で判断が分かれる事案もあります。
裁判例を見てみましょう。
裁判例で見る「厳しい指導はパワハラか」
東京高裁令和3年6月16日判決(労働判例1260号5頁)
事案の概要
バス運転手が上司から以下のパワハラを受けたと主張しました。
- 「その辺のチンピラがやることだよ。チンピラいらねえんだよ、うちは。雑魚はいらねえんだよ」と強く叱責
- 執拗に退職勧奨
- 業務復帰禁止、服務心得の書き写し、反省文の提出、小説の感想文の作成を指示
原審(地裁)
会社側が敗訴。要旨と理由は次のとおりです。
- 「チンピラ」「雑魚」の侮辱発言 →不法行為
運転手がうつ状態と診断されたことなどを併せて考慮→社会通念上許容される業務上の指導を超えた、過重心理的負担を与えた違法なもの。
- 業務復帰禁止や同種読書等 → 過小要求として不法行為
上記事情を総合考慮→社会通念上許容される業務上の指導を超えた、過重心理的負担を与えた違法なもの。
高裁判断(結論)
一転して違法性を否定。要旨と理由は次のとおりです。
侮辱的表現が、労働者の職責、上司と労働者との関係、労働者の指導の必要性、指導の行われた際の具体的状況、当該指導における発言の内容・態様、頻度等に照らし、社会通念上許容される業務上の指導の範囲を超え、労働者に過重な心理的負担を与えたといえる場合には、当該指導は違法なものとして不法行為に当たる(一般的な判断基準)。
本件について
- 問題行動が複数あった。
- 指導の必要性が極めて高く、叱責等の発言に厳しいものがあったとしても直ちに業務上の指導の範囲を超えたことにはならない。
- 「チンピラ」との発言は、発言の趣旨から業務上の指導と無関係に当該運転手の人格を否定するものとはいえず、社会通念上許容される範囲を逸脱した違法なものということはできない。
使用者が労働者に対してした業務上の指示・指導が、業務上の必要性・相当性を欠くなど、社会通念上許容される業務上の指示・指導の範囲を超えたものであり、これにより労働者に過重な心理的負担を与えたといえる場合には、当該指示・指導は違法なものとして不法行為に当たると解するのが相当である(一般的な論を明示)。
本件について
- 本件指示は、教育目的の範囲から逸脱するものではない。
- 同様の作業を繰り返させたこと、反省文の提出→本件指示は過小な要求には該当せず、不法行為を構成しない。必要性を欠くものであったとも認めがたい。
(なお、本件判決は、本件発言や指示以外に退職強要発言があったとして、22万円の賠償請求権を認めました。)
裁判例から分かる重要ポイント
本裁判例は、パワハラの代表的な言動の類型のうち、①精神的な攻撃、及び②過小な要求について、一般的な判断基準を示した上で、不法行為該当性を検討したものです。
裁判所は、発言の内容だけでなく、
- 指導の必要性や相当性
- 経緯
- 頻度
- 本人の態度
- 改善状況
- 周辺事情
などを総合考慮して判断しています。
つまり、
「発言がきつい=パワハラ」ではない
「言い方が厳しい=違法」でもない
ということになります。
ハラスメント該当性の判断で多い失敗
実務では、次のような誤判断が多く見られます。
- 発言の一部だけで判断
- ヒアリング不足
- ヒアリング結果の記録が曖昧
- 各供述の整合性検証なし
- 調査結果や懲戒処分を先に決めてしまう
このような対応は、後に紛争化するリスクがあります。


社内調査の限界
パワハラ該当性の判断には、
- 事実認定
- ヒアリング結果やその他の証拠の法的評価
- 処分の相当性判断
が伴います。
特に次の場合は慎重な対応が必要です。
- 懲戒処分の可能性
- 労災申請の可能性
- 供述が食い違う
- 精神的不調を訴えている者がいる
- 供述(記録)が曖昧
パワハラ判断の基礎となるヒアリングを人事担当者が担当するのは、精神的にも法的にも大きな負担となります。
ハラスメント調査代行の役割
外部調査を活用することで、
- 中立的な事実認定
- 供述整合性の検証
- 証拠精査
- 紛争予防
- 適正な処分
が可能になります。
当社の強み|公正な調査と職場環境の安定の両立
当社代表は元検察事務官として供述調書作成に精通しており、供述の任意性・整合性・記録の正確性を重視したヒアリングを実施しています。
ハラスメント調査は、単に事実を認定するだけでなく、調査後の職場環境や人間関係にも大きく影響します。
当社では、公正な調査を前提としながらも、当事者間の対立を過度に深めないよう配慮し、組織として納得感のある形で職場環境の改善につながる調査を重視しています。 事実認定と職場の安定を両立する点が、当社の調査の特徴です。
よくある質問(FAQ)
Q. 厳しい叱責はすべてパワハラですか?
いいえ。業務上の必要性と相当性があれば違法とはなりません。ただし、それまでの経緯や関係性、業務の内容等を総合的に考慮して判断することになります。
Q. 社内調査だけでパワハラの判断をしてもよいですか?
パワハラの判断には、ヒアリングで必要性や相当性の判断資料を詳細に聴取することが非常に重要です。特に、懲戒処分や紛争リスクがある場合は、第三者の立場にある専門的な外部調査が望ましいです。当社の調査をご利用の場合、調査結果に社外弁護士による法的意見を加えることで、公正性をさらに高めることが可能です。
Q. 調査代行はどんなときに必要ですか?
公正な調査が必要な場合、これまでの経緯から社内調査によってトラブルに発展しそうな場合、関係者が多い場合、懲戒処分を検討している場合、労災や訴訟の可能性がある場合などに有効です。
ハラスメント調査・ヒアリング対応でお悩みの企業様へ
- 指導がパワハラか判断できない
- 社内調査で対応できるか不安
- 懲戒処分を検討している
- 体調を崩している関係者がいる
- 紛争化を防ぎたい
当社では、ヒアリング実務に特化したハラスメント調査代行を提供しています。ご相談は無料です。社内調査で対応可能か迷う場合段階でもご相談ください。
執筆者:株式会社リーガルライト 祐川 葉
-1-300x158.jpg)
ハラスメント対応なら
法人様向けヒアリングによる事実調査専門の株式会社リーガルライトへ
ハラスメント対応なら
法人様向けヒアリングによる事実調査専門
株式会社リーガルライトへ
弁護士 祐川 友磨
慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
2015年の弁護士登録後、都内の弁護士事務所に勤務し、2021年に祐川法律事務所を開所。
企業法務・労務を中心に各種事案に幅広く対応。
弁護士 祐川 友磨
慶應義塾大学法学部法律学科卒、早稲田大学法科大学院修了。
2015年の弁護士登録後、都内の弁護士事務所に勤務し、2021年に祐川法律事務所を開所。
企業法務・労務を中心に各種事案に幅広く対応。

